広報誌「さいたま」2025年10月 No.307より
令和7年産の小麦では、熊谷のアメダスデータから推定された赤かび病子のう胞子飛散好適日の積算日数が4月の1か月間に11日と過去10年間で4番目に多くなりました。茎立期から出穂期にかけて、気温が高く降水量が多かったことから、各地で湿害による生育不良が見られました。また、雨や強風の影響で倒伏の発生が散見されました。
近年、栽培期間を通して高温や突風、豪雨などの異常気象が続き、今後の気象もどう推移するか読めない状況です。
基本技術を励行し、気象災害に強く、収量品質の良い小麦栽培を心がけましょう。
想定外の雨にも負けない「排水対策」
排水不良による湿害は、発芽不良など収量・品質低下の大きな要因です。は種前には弾丸暗渠で雨水の地下浸透を促すとともに、は種後はほ場の外周やほ場内に5~10m間隔で明渠を掘り、ほ場表面の排水を図ります。明渠をほ場外の排水溝に接続しないと、単なる水たまりになってしまうので注意しましょう。
乾燥対策のカギは「砕土率」
砕土率が高い(土が細かい)と、土壌水分が均一となり出芽率が向上します。トラクタの作業速度を低速にする、逆転ロータリを使う等の方法があります。
粘土質土壌では水分が多いときに作業すると、土を固めてしまうため、乾いてから作業します。
良い麦づくりは苗立ち確保から「適期には種・適量をは種」
種子は必ず更新して、種子消毒を行いましょう。
「さとのそら」のは種適期は11月20日~30日です。早まきは過繁茂につながります。は種量はドリルまきで5~7kg/10aを基準にし、天候不順等によりは種作業が遅れた場合は、は種量をやや多めにして、苗立ち数を確保します。
収量・品質の確保に向けて
「さとのそら」は、後まさり型なので追肥をしっかりと施します。基肥は窒素成分で6~7kg/10a(例:化成肥料(14-14-14)なら45~60kg/10a程度)、追肥は窒素成分で4kg/10aを基準にします。一発肥料を用いる場合、窒素成分で10~13kg/10aを基準にします。なお、地力にあわせて施肥量は調整してください。
暖冬でも軟弱にならないように
凍霜害や過繁茂を防ぐ重要な作業です。本葉が3枚以上展開したら、年内に1回、追肥までに2回を目標に行いましょう。トラクタの速度を落としてしっかりと鎮圧しましょう。
暖冬で生育過剰の場合は、茎立ちまでの期間に追加の作業を検討しましょう。軟弱に育てると、春先の急な寒さの影響を受けやすくなります。
適期作業で草を抑えましょう
は種後の土壌処理剤散布を基本に適期に散布します。散布前に土壌鎮圧を行うと、除草剤の効果を安定させることができます。ヤエムグラやカラスノエンドウなどの広葉雑草が発生している場合は茎葉処理剤を使用します。
なお、前作でカラスムギが多発したほ場では、可能な範囲では種を遅らせ、それまでに発芽したカラスムギを非選択性の除草剤により枯らします。場合によっては休耕し、耕うんや非選択性除草剤でカラスムギの密度を減らすなどの対策も検討しましょう。
広報誌「さいたま」2025年8月 No.305より
最近、米ぬか等の不足により土壌還元消毒に使用する有機物の入手が困難な状況がみられます。そこで、農研機構が開発した低濃度エタノールによる土壌還元作用による土壌消毒を紹介します。やり方は、土壌1%以下に薄めた低濃度エタノール水溶液を土壌にかん水処理し、農業用透明ポリフィルムで覆って放置するだけの簡便で安全な土壌還元消毒技術です。
参考資料
農研機構ホームページ「低濃度エタノールを利用した土壌還元作用による土壌消毒 実施マニュアル (第1.2版)」
日本アルコール産業株式会社ホームページ